令和6年度、不登校の児童生徒は約35万人にのぼると言われています。
これは単なる数字ではなく、学校教育が抱える深刻な問いかけです。
大人たちは必死に居場所をつくろうと動いています。保健室での相談活動の充実、学習支援室や適応指導教室の設置、スクールカウンセラーや小児科医との連携。学校外でもフリースクールやプレーパーク、子ども食堂といった多様な居場所が生まれています。
どれも子どもたちを孤立させないための大切な取り組みです。
しかし私は、子どもたちを「行かないことが問題だ」と捉えるだけでは根本的な解決にならないと感じます。
学校へ行くこと、授業を受けること、テストで良い点を取ることが当たり前とされる風潮の中で、子どもたちの心や学びの意味が置き去りにされてはいないでしょうか。
夜遅くまで塾に通い、定期テストの点数を追いかける日々が、本当に子どもたちの未来にとって最も大切なことなのかを問い直す必要があります。
私自身、約30年教壇に立ち、授業の工夫を重ねてきました。
正の数負の数の学習を「誰が一番お金持ちになるかゲーム」にして体育館で大騒ぎしたこと、
ヒモで1立方メートルの空間を作り、子どもたちにその中に入ってもらって体感させたこと。
そうした体験は、公式や暗記だけでは得られない理解と喜びを生み、子どもたちの目を輝かせました。
学びは教科書のページをめくるだけではなく、身体や感覚を通して深まるものだと実感しました。
だからこそ、学校は
「行けば何かが学べる」
「今日の授業が楽しみだ」
と思える場所でなければなりません。
その出発点は制度や設備だけでなく、一人ひとりの教師の授業です。
教師が子どもたちの興味を引き出し、いきいきとした学びの場を一つでもつくることが、やがて学校全体の空気を変えていくはずです。
評価の仕方や時間割、外部支援のあり方も見直す必要がありますが、まずは目の前の授業が子どもにとって意味あるものになることが何より重要です。
不登校の増加は子ども側だけの問題ではありません。
学校という場の在り方を問い直し、学びの質と居場所の豊かさを取り戻すことが、子どもたちの未来を拓く鍵だと私は信じています。