今日は、思考力についてのお話です。
学校ではよく、「文章題をたくさん解けば思考力がつく」というような雰囲気があります。
しかし、子どもたちと日々向き合っていると、思考力は単に難しい問題に挑戦するだけでは育たないことを強く感じます。
たとえば、
「縦28cm・横21cmの長方形に、同じ大きさの正方形を敷きつめます。一番大きい正方形の1辺は何cmですか。」
という問題があります。
一見すると「最大公約数を求めるだけ」のように見えますが、実際には次のような多くの理解が必要です。
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正方形は縦も横も同じ長さであること
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敷きつめるには、縦も横も“割り切れる”長さでなければならないこと
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余りが出ると敷きつめられないこと
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だから、両方の長さを割り切れる数の中で一番大きいものを選ぶこと
これらを子どもが自分の頭の中でつなぎ合わせていくには、説明を聞くだけでは不十分です。
「どうして割り切れないといけないのかな」
「5cmだと何が起きるんだろう」
「正方形ってどんな形だっけ」
こうした問いかけを通して、子どもは自分の考えを言葉にし、その中で気づきを積み重ねていきます。
つまり、思考力は“対話”の中でこそ育つのです。
一斉授業では、どうしても「説明 → 演習」という流れになりがちです。
しかし、本当に大切なのは、子どもが自分の言葉で考えを組み立てる時間です。
その時間をつくるのが、教師との対話であり、学びの本質だと思います。
ここ数年、「思考力の育成」がよく話題になります。
その影響で、文章問題が多く出題されるテストも増えています。
しかし、重要なのは“どのように指導するか”です。
日常の授業で、単に問題を解き、答えが出ればよいのではありません。
子どもたちに問いかけ、考えさせ、どうしたら自分で答えにたどり着けるのかを一緒に探る。
その積み重ねこそが必要です。
思考力育成のために特別なことをするのではなく、
日常の対話そのものが、思考力を育てる最も大切な手段である
ということを、私たち大人がしっかり意識することが大切だと思います。